1対1のキーワード

これを意識すれば必ず勝てる!

1対1を楽しめる選手になってほしいということを前回書きましたが、ではどうやれば1対1を楽しめる=勝てるようになるのでしょうか?

能力で相手を圧倒できるのなら、例えばサイズやスピードで大きく優るなら工夫もなく勝てますが、平均的な子であっても駆け引き/スキルで勝てるし、それを教えるのが指導者の仕事です。

結論から言うと、私が重視しているのは以下の5つです:
 ①ディフェンスを動かす
 ②ディフェンスが答えを教えてくれる
 ③後出しジャンケン
 ④急急でも緩緩でもなく緩急
 ⑤攻め気が全てを解決する


①ディフェンスの両足のスタンスの内側で動いても「お釈迦様の手の上の悟空」なわけで、ディフェンスは反応しません (というか私はそのように教えます)。

なので、スタンスの外に向かってボールや自分の体を投げ出す形でフェイクして、ディフェンスを動かそうとするわけですが、その際にはゴールとアングルの選択と、レーン・チェンジによる切り返しが重要になります。

全てのプレーにフェイクがあるというのは鷲野先生の言葉ですが、普段からどんな場面でもディフィエンスの存在を想定し、だまして動かすマヌーバーを付加する習慣をつけるべきです。また、2拍子のフェイクはみえみえな一方、3拍子のフェイクは非常に有効です。


②1対1をオフボール状態から始めるとして、ボールサイドカットのコースが空いていたらどうするか、バンプされたらどうするか?あるいはパスを受けた瞬間にインラインが空いていたらどうするか、コースを押さえられたらどうするか?

更には、ドライブに並走されたら/先回りされたら/後追いしてきたら/カバーが来たら、それぞれどうするか?色々なスペースとポジションの取り合いのパターンに応じて、最適なプレーを選択できるための解釈法=1対1のセオリーを選手達に備えさせねばなりません。

ただし、ディフェンスの裏をかく、それに対応されそうになり裏の裏をかく、といったことを続けていては、自分がそもそもやりたいことからどんどん離れていってしまいます。どこかの時点で、ディフェンスがくれる答えではなく自分なりの答えにこだわり、決め打ち的にプレーする必要はあります。


③ディフェンスの反応を見たりディフェンスが教えれくれる答えを知るには、ディフェンスをウォッチすることが必要で、そのための時間を作らねばなりません。

例えばドリブル・ドライブ時のスキルとして、ポケットはボールを引いて時間を作りつつ前に投げ出す準備をする動作ですし、フロートはツーステップやスキップによって時間を作ると同時に横ズレを生じさせる動作ととらえることができます。

更にスキルを深化させるには、このディフェンス・ウォッチのための時間を、オフェンス・マヌーバーのための時間としても使うのが有効です。例えば、ポケットにシミー動作を加えたり、スキップにジャブ動作を加えたりする。指導者の腕の見せ所です!


④急急はスピード任せで、自分よりも速い相手には勝てない。緩緩では相手にみえみえでいつまでも振り切れない。1.0がノーマル・スピードだとして、それを0.5に詰めるのはスピード競争であり能力勝負の世界です。

逆に、1.1、1.5、1.9を使えないだろうか?1.0→0.5の変化幅は0.5、1.0→1.1の変化幅は0.1であり、後者の方が実は速いのではないか?更に0.5の速い動きを2つ組み合わせれば1.0になり、無駄かつ凡庸な動きになってしまうのではないか?

1.0→2.0→3.0に対して1.5→2.5→3.5と裏拍を取っても、変化の幅自体はともに1.0であり、ズラす効果は小さいのではないか?小数を超えて無理数ではどうか?ボールを対角線に最短距離で動かせばルート2、大きく斜めに動かせばルート5、丸く動かせばπになります。

このように整数でふつうは把握するリズムを小数点に置き換えてみることで、より繊細なムーブが生み出せるのではないかと私は考えています。


⑤ボールマンであれオフボールマンであれ、ディフェンスを破りチャンスとなるスポットに動いて得点するという意図とスキルを持っていなければ、個人でもチームとしても有効なプレーは創れません。

上の②とも関係しますが、オフェンスに攻め気=脅威があればこそ、ディフェンスは正しい答えを教えてくれます。個人のムーブのみならず、チームとしての連携プレーの中でも、個々が攻め気を示すことで最適解が見えてきます。

例えば、側線速攻に対してディフェンスが対応し始めると、縦パスが通りにくくなりますが、その際は「ミドルドライブできる!」「ミドルレーンに走り込めばパスをもらえる!」というように、次の攻めをイメージできねばなりません。

そして、ミドルレーンをそのように攻められるようになれば、ディフェンスは今度は縦パスを妨害できなくなります。結局、1対1の攻め気とスキルがあってこそ、スペーシングや合わせといったチームのセオリーが機能するのであり、シ・ド・パすべてにおいてタイミングがシンクロするわけです。


今回は一気に難しい議論のオンパレードになりました。

詳しい実践法を説明するには紙面がいくらあっても足りないので、私達の指導現場をみていただければと思います。

以上

2020/5/28