ドリブル vs. パス

どちらが優先?

ドリブル重視の指導に対してよくある批判は「ドリブルよりもパスの方が速い、なるべくパスを使うべき」というものです。

でも本当にそうですか?

NBAもB.LEAGUEもWJBLも、ガードがドリブルで運んだりゲームメイクしたりがほとんどです。その上で、味方がフリーになったらビュンとパスを飛ばしたり、相手の意表をついたノールック・パスを通したりしている。


この問いに対する答えは、35年前にひもといた笠原成元先生の指導書の中にすでにありました。すごく衝撃を受けたのを今でも覚えています。

「縦パスはドリブルよりも速いが、横パスよりもドリブルの方が速い」

笠原先生は当時としては珍しくドリブルの有用性・重要性を強調され、ユニークなバスケットボールを展開されていました。小野秀二さんを始め、東京教育大〜筑波大の歴代のポイントガードの個性豊かなプレーが思い出されます。


「ドリブルばっかでボールを持ちすぎ!」「そんな狭いところに突っ込んじゃって...」「前を見ろ、味方がフリーだぞ!」

今の時代はドリブル偏重に近いですが、ドリブラーに対するこんな非難もよく聞くようになりました。

私なら「(ドリブル中に)どこを見ようとしてる?」「(ドリブル開始前に)だれがどのスペースを使える?」「味方がフリーだったのにパスしなかった理由は何だったの?」と声がけする場面です。

そして、この種の批判的な目に対して私が思うのは、それってドリブル自体が悪いのではなくて、ドリブルの使い方や状況判断が下手な点が問題なのでは?ということです。


指導者として、ドリブル・ハンドリングやフットワーク/ハンドワークだけでなく、始め方と終わり方の原則、スペーシングと合わせを含む状況判断、ディフェンスとの駆け引きの原理を身につけさせているか?

ドリブル・チェンジや色々なフェイクを一通り理解した後は、SDDL方式などで使い方・使い分け方を子供達自らが気づき、見出していかねばなりません。

状況判断や駆け引きはコンセプトではなく個々のフィーリングが大きく関わるものだからです。この辺のことに関しては、昨日投稿した「1対1のキーワード」もご参照ください。


更に、指導者の仕事として、多様化し続けるドリブル・スキルを体系的に把握して、子供達が知り・理解できるように整理された形で提示してあげる必要があります。

しかし、最近のスキル動画や指導書・DVDを見ると、スキルを適当に分類して並べ立てただけのものが多いように思います。コーチングが分類学に陥ってしまい、選手達はスキルの種類の多さに混乱してしまっている...

先日も書いたように、後藤祥太コーチはスキルセットを「パッケージ」にした上で、チームや選手の特性・ニーズに合わせて提供されているように思います。私はツーステップ系とかポケット系に「シリーズ化」して練習させますが、目的は同じです。


結局、指導者は分類学者ではなく、人類学者でなければならないんですね! (今回はこれが言いたかっただけだったりする)

以上

2020/5/29