レイアップは庶民シュート?

言うほど簡単には決まらないんだよなぁ...

レイアップショットは漫画「スラムダンク」で庶民シュートと呼ばれるくらいに基本的なスキルと考えられていますが、指導する上で特に簡単でもなければ、実戦ではディフェンスが最大のプレッシャーをかけてくるので、イージーと言うほど確率が高いわけでもないのが現実です。

リング近くのレイアップショットとジャンプショットは確かに初心者・初級者に最初に教えるものなのですが、海外ではオーバーハンドから教えるのだとか、ジャンプショットにつなげやすいのだなどとノイズ(?)が紛れ込んできて、なかなか一筋縄ではいきません。


オーバーハンド vs. アンダーハンドという意味では、練習指導&実戦経験から私が言えることは、同時に教えるのでも構わないし、オーバーハンドレイアップの方が優れているわけでもなく、両方が必要であるということです。

オーバーハンドレイアップは2種類あります。アンダーハンドレイアップと合わせて3種類です。


①まず、ジャンプして空中でジャンプショットのフォーム(例えば右手がボールの下、左手が横から支える)をつくって打つ。JBAがとか欧州がとか言われるのはこちらです。

ボールの推力を弱めるために十分に空中でタメる必要があり、それが不十分な低学年や初心者がこのシュートをすると、バゴーンと大きく弾かれるようなシュートになります。なので、初心者向けとは言えません。


②もう一種類は、早いタイミングで支える手を離してボールを片手に乗せ(肩のあたりで片手にする;上級版はドリブルからそのまま片手で)、そのまま脱力感の強い手・腕でボールを放つやり方です。フローターはこのシュートの延長上にあり、特に難しいものではありません。

低学年はそもそも脱力しているというか力感がない手・腕の振りになるので、思い切り打ってちょどう良い印象です。上記①のようにジャンプショットのフォームを作る必要がなく、楽なタイミングで片手片足でポンとボードに当てるだけなので、初心者に教えるのも容易です。

このショットの重要な応用型としてランニング・フックがあります。私は「背中に羽が生えていると思って、手ではなくて羽の方でシュートして」と指導しています。片手でボールさえ飛ばせるなら、低学年でも簡単にマスターできます。


③アンダーハンドレイアップの難しさは、片手の手のひらにボールを安定させるハンドリングが必要になる点です。

上に書いた②のシュート方法においては、ボールを投げあげる力+ボールの重さでボールが手に押し付けられますが、アンダーハンドの場合はボールが横に逃げやすいからです。手のひらが小さい低学年や初心者が両手でアンダーハンドレイアップをしようとするのもこれが理由です。

また、ボールを投げ上げる勢いは、体重の軽い低学年とリングの高い中学生以降はそこそこ必要で「ジャンプして(下から)シュッと投げる」ことになりますが、高学年はジャンプの勢いがボールに乗り移るのでまさに「ボールと一緒に跳んだあとにポンと置いてくる」感じになります。


【結論1】アンダーハンドレイアップを教えるのを後回しにするのは私は反対です。

攻めるアングルを広くするのに非常に有効なリーチバック、レイバックはアンダーハンドでしか出来ませんし、ボールをディフェンスから遠ざけて打つのも、アンダーハンドの方が操作しやすいです。

また、ディフェンスを縦にかわすブロードジャンプ(前に流れる跳び方、JXの藤岡麻菜美選手など)やダブルクラッチからのシュートは、アンダーハンドで勢いやタイミングをコントロールする必要があります。

なお、チェストパスもそうですが、NBAの試合をみてもアンダーハンドレイアップは余り使われないなんてことは全くありません。


【結論2】②と③を並行して教えるのがベストだと考えます。

ボールの片手操作を初期から当たり前にしたいのと、シ・ド・パを通じて同じメカニズムでボール操作をすれば足りることから、②を優先することに異論はありません。

私は通常リングが6つあるコートを使用するので(メイン2つ、サイド2つx2)、メインリングでアンダーハンド、サイドリングでオーバーハンド(ないしストップショット)とレイバックという感じで、3種類いっぺんに練習することが多いです。

上の①の打ち方はジャンプショットやドリブル・プルアップショットと同質のより難易度の高い動作で、いわゆるツーモーション・ショットが出来るだけの身体操作・内部感覚をじっくり作ってからの方が習得が早いし正しいスキルが身につくと思います。

以上

2020/6/30