第三回体験会レポート (3) シンプル≠単純、ドリブルドライブの体系化
ユニバーサル・スキルについて、練習メニューを公開本稿は長い箇条書き(?)を多く含んでおり、携帯電話画面ですと非常に閲覧しずらいと思われます。いつも長文で済みません...
【ユニバーサル・スキルという考え方】
(1) ユニバーサル・スキルとは、特定の集団や業界のみならず広く一般に通用する知見やノウハウのことです。知識、経験、論理的思考力、コミュニケーション能力、自己管理力、倫理観、学習力なども含むとされています。
バスケットボールで言えば、どんな年齢・体格・能力の選手でも必要とされ、どの競技レベルでも通用するスキルということになります。指導者として様々なチーム・選手のプレーや戦術を観察する傍ら、理論的な部分を学び続ける中でようやく見えてくるものであるように思います。
ユニバーサル・スキルを身につけることで、選手は特定のチームや指導者に依存することがなくなり、自立・自律して論理的に考えてプレーできるようになります。自らの経験を言語化し体系化することで汎用的に使えるようにもなると言い換えることもできます。
(2) このようにスキルを系統立てて導入してみて気づくのは、プロの試合で注目されるような技であってもその構成要素はシンプルなファンダメンタル・スキルであり、プロは後者を途方もなく速くかつ極めて正確におこなっているのだということです。
その意味では、NBAやユーロリーグの動画でみるような凄技も完璧なファンダメンタルズに裏付けられていて、ジュニア選手たちでも今日から目標に据えてチャレンジを開始できるものなのだと思います。
指導者はプロの凄技(≒完成形)を分解して、それ自体が一つの技として成立するシンプルな要素を抽出する。この「シンプルな要素」をユニバーサル・スキルとしてジュニア選手たちに伝え磨いていくことで、ファンダメンタルズが整備されていくというイメージを私はもっています。
(3) 例えば、3回の体験会を通じてのテーマであったドリブル・ドライブ(ドリブル始動後の抜き技)であれば、構成要素として観察されるのは:
1. ドリブル・ストップの手法
①ボール操作: コース、強さ・速さ、タイミング/リズム
②ステップワーク: インサイドフット、アウトサイドフット、ジャンプストップ、ステップアウト、ゼロステップ
③上体の動き: 正対、背中、半身、ひねり(ヒップ・スウィベル)、ボールと逆(シフト)
④オフハンドの使い方: ノーマル・プロテクション、パンチストップ
⑤コンタクトする/される
2. ネクスト・ムーブ (ムーブ無しなら 3. フィニッシュへ)
2-1 ドリブル・チェンジ:
①ボール操作: コース、強さ・速さ、押さえるか遊ばせるか、タイミング/リズム(1拍子 vs. 3拍子、0.5拍子/裏拍)
②ステップワーク: ノーマル、スピン、スキップ、ツーステップ、リトリート
③上体の動き: シフト動作時を除けば基本的に進行方向に入れ替える
④オフハンドの使い方
⑤コンタクトする/される: いなす、押し合う、逃げる
2-2 ボールを収める (チェンジなし or チェンジ後):
①ボール操作: ノーマル、ヘジテーション(ヘジ)/ポケット、インサイド・アウト(インアウト)/スタブ、シャドー(ドリブル中のショット・フェイク)
②ステップワーク: フットスイッチ、スプリット、Wステップ
③上体の動き
④オフハンドの使い方
⑤コンタクトする/される
3. フィニッシュ
⓪アームワーク: オーバーハンド、アンダーハンド、フック、クイック(フロート/スクープ)
①ボール操作: ノーマル、順手 vs. 逆手、ユーロ、ウィンドミル/スイング、ギャロップ、ゼロステップ
②ステップワーク: ノーマル、ワンステップ(逆足)、ユーロ、ギャロップ、ゼロステップ
③上体の動き
④オフハンドの使い方
⑤コンタクトする/される:最後のドリブル時、ワンステップ&お尻・大腿で、ツーステップで
この場合、ドリブルドライブを分解して得られるシンプルな要素とは、1. ドリブルストップ→2. ネクスト・ムーブ→3. フィニッシュの3つであり、更にネクスト・ムーブの下層には2-1 ドリブル・チェンジと2-2 ボールを収めるという2つのサブ要素が含まれています。
そしてそれぞれの要素/サブ要素の下には、共通のスキルとして①ボール操作、②ステップワーク、③上体の動き、④オフハンドの使い方、⑤コンタクトする/されるが出現しています。
これら5つ(①〜⑤)のスキルをレッスンしていくわけですが、要素/サブ要素ごとに各スキルのディテールは異なります (一部のディテールを参考までに表記してあります;指導者の方は全部を埋めてみることをお薦めします)。また、フィニッシュ要素にはもうひとつの最重要スキル=⓪アームワークが付け加わっており、レッスンがより重層的になることが示唆されています。
さて、分習法の段階では、ドリブルストップ、ドリブル・チェンジ、ボールを収める、フィニッシュの4つに分けてそれぞれの精度を高めていくことになります。そして精度を高めるには、4つの要素それぞれに絡んでくる上述の5つのスキルのディテールを詰めていく作業が必須です。
そして全習法の段階では、1. ドリブルストップ→2. ネクスト・ムーブ→3. フィニッシュを一連の流れとしてワンセットでプレーすることになります。1・2・3それぞれに何種類もの選択肢がありますから、バリエーションは非常に多くなります。
多数のバリエーションだけを見ると技の羅列に過ぎないですが、基底となる3つ(4つ)の要素と5つ(6つ)のスキルを体系的に理解しておけば、すべてが有機的につながり、選手たちも技の面白さや奥深さを感じられるようになります。そして指導者がディテールを詰めてあげることでプレー精度やゲームでの有効性が劇的に向上していきます。
【練習メニューを公開!】
以下は、8月1日に開催した体験会のための練習計画です。上述した3要素と5スキルを意識しつつ、分習法→全習法の繰り返しで構成されていることに気づいていただけると思います。横浜ボブキャッツのレッスンをイメージしたり、指導アプローチの概略を理解していただく他、何らかの参考になれば幸いです。
横浜ボブキャッツ体験会 (08/01/20)
☆実戦的なユニバーサル・スキルを使いこなし、試合で活躍できるアスリートを育成する
☆競技性とプレーの本質的な理解に基づき、合理的かつ効果的なムーブをマスターする
8月のテーマ: ①ツーステップ ②スキップ ③スピン ④ジャブ
18:30 受付開始、手指とボールの消毒のあとアイスブレーク・セッション
ファン・ドリルでリラックス (カメレオン、ボールピックアップ、ボール回し2種)
シューティングで集中 (リングの区分け、他の子のボールは拾わない、ロングシュートの落下地点に注意)
18:45 ボディ・ハンドリング&ボール・ハンドリング: 自由自在に身体とボールを操作する
肩関節/肩甲骨、股関節、スタンスとバランス、軽いトレーニング(特にハムストリング)
ボールの縫い目の意識、ボールの重心操作を意識したハンドリング・メニュー
19:00 「速いドリブルワーク」&ドリブルショット: 投げるドリブル (シ・ド・パは同根)
丸く、M高低、vVv、前後2種、レッグ、その場バック、スピン、ドリブル・ストップ2種、サイドキック1
動きの中での開脚チェンジ(横へのズレを意識する)
1拍子チェンジからのドリブルショット (もらい足から or 開脚キャッチから)
=ノーマル、フロントチェンジ、ディープレッグ(沈む・寝る)、サイドヘジテーション、クロスジャブ、インアウト・クロス、高速スピンなど
↑沈む=体を先に動かす、更には重心残しとポケットの違い
19:20 「観るドリブルワーク」&ドリブルショット: ドリブル1対1の攻めのコツ
3拍子でつく、ボールに負けるM&ツーステップ、スタブ、サイドキック2、ポケット系、8の字
「動かす・観る・後出しジャンケン」を実践しつつ各種チェンジ&ステップからのドリブルショット
=ツーステップ&ポケット、スキップS/W、レッグ&ポケット/W、スタブ&ポケット、シャドウ、シャドウ&切り返し
↑ダッシュ&SJS、ダッシュ&レイアップ、ダッシュ&ポストプレーは次回に
19:40 3Pラインでの状況判断と駆け引き: グループ別メニュー(以下は中学生&上級生)
ミラードリル (FTライン or ToKでドリブル横移動&シャドウ or ショット)
3Pラインでの状況判断と1対1(コーン→ダミーDEF)
20:00 ランニング・ゲーム: オールコート・メニュー by 磯田コーチ
固定メンバーのグループで手指と共有ボールを消毒した上で実施
20:20 他にノックアウトやシューティング(レッスンないしフリー)も予定
20:30 クールダウンはセルフストレッチ系で (ペアでやらないこと)
21:00 完全撤収 (器具の消毒や戸締り等はスタッフにお任せください)
☆次回15日の体験会最終日のテーマは:フェイス・ドライブ (パックラインDEFを想定)
☆8月後半から毎週木・日曜日と隔週土曜日に正規レッスンを開始する予定です
☆運動強度と接触許容度を考慮しつつチームスキルのレッスンも導入して参ります
以上