ポケットドリブルを見直す - 親指を上に向けるだけ!

もうダブドリだとは言わせない

(1) まずは結論から:

① ポケットドリブルとはドリブル中にボールの背面(後ろ側)に手のひらを持ってくるスキルである
② 動作としては弾み上がってくるボールを体の横に持ってきつつ手の中に引き付けて背面から支える
③ 感覚としてはボールが弾み上がる勢いで手のひらが前を向くようにターンさせられ、親指が上を向く
④ ターンドリブルをきっかけにしてポケットするのが簡単かつスピードや強さも犠牲にならないので◎

必須かつ強力なポケットドリブルですが、キーワードは「ボールの背面を支える」「手のひらが前を向く=親指が上を向く」の2つだけで、そもそもシンプルで誰でもすぐ身につけられる基本スキルです。

タメを作ることやボールを引くことは本質的ではないという点が重要です。従来はそれが目的になってしまい、不自然な後方ターン動作やキャリー(ダブルドリブル)を大量生産していました...


(2) この2つのキーワードを実現するやり方は2つあります:

A ターンドリブルを利用する - 丸く突くドリブルの一種ですごく簡単です

これはプレーヤーを横から見て細長い楕円形を描くようにドリブルをつくもので、特に意識せずとも手のひらは文字通りターンして前を向きます。

後述のぱらとさんの動画( https://youtu.be/vm0cU-muCm8 )の2:50〜に例がありますが、ポケットドリブルの場合は手のひらを動画よりももっとボールの背面に持ってきた上で必要に応じてタメをつくります。

なお、前から見て楕円形を描くようにドリブルをつくとボールを横に振る「スタブ」というスキルになります。これも簡単かつ有効で超お薦めです。後述のBe a ballerさんの動画をご参照ください( https://youtu.be/D6X7oBqHGiY )。


B ボールを置くように突いて踏み込む - 裏拍も絡んでいて面白いスキルです

ボールを前に突き出してから体の横/後ろに引いて戻すのではなく、ボールを下に突きながら体を前に進めることで当たり前にボールは体の横に収まります。胴体に対するボールの位置が変わることで、親指は自然に上を向くことになります。

この動作に関しては、RISEの今田さんが明快に解説していらっしゃいます。スキルクリニック動画( https://youtu.be/Gk3_9mXpiKs )の4:50〜の「ポケットドリブルの誤解」と題した部分です。

ディフェンスとの間合いが狭すぎて前に踏み込みにくい場合は、Aで触れたスタブによって横ずれを創るのが良い解決策になるでしょう。


(3) ポケットドリブルの有効性

ポケットドリブルという名称が広まる前から、この種の動作はアイバーソンクロスオーバーの一部として注目されていました。今でも説得力は減じていない素晴らしい理論と実践例であると思います。

ポケット動作に関してYouTube上で議論をされていた好例としては、Be a ballerさんの「アイバーソンのクロスオーバー」( https://youtu.be/PiD9gSe3s9w )や大井崇幹さんの「超上級クロスオーバー」( https://youtu.be/fvTXLGV_0tI?t=3 )が挙げられます。非常に質の高い動画で必見です!

そしてポケットドリブルそのものを取り上げて、流麗なデモンストレーションで解説してくださったのが山本柊輔さんの「プロが教えるポケットドリブル」( https://youtu.be/JFT8FiApbB0 )でした。

この動画は最近「新・プロが教えるポケットドリブル 2021 ver.」( https://youtu.be/X0m-EtIwDJc )として改訂されました。B.Leagueでの現場体験やご自身の違和感が理由であり、真摯な姿勢は私も見習いたいです。

この一連の流れについての考察は、次項で触れさせていただきます。


(4) ポケットドリブル論争(?)

スキルコーチの方々の普及活動やネット情報のおかげで、ミニバスも含め日本中に広まったポケットドリブルですが、引きつけやタメが強調されすぎてボールを保持してしまっている例が多いのが実情です。

日本人選手が海外のスキルコーチに習う際にも、ポケットドリブルを「それはキャリーだよ」と直されるケースが相次ぎ、日本流ポケットドリブルのガラパゴス化(?)を懸念する声も最近は増えていました。

そして、エントレ【物理で見るバスケ】のぱらとさんが一週間前に「ポケットドリブルの危険性」と題した動画( https://youtu.be/vm0cU-muCm8 )を投稿されたことで、見直しの動きが加速したという印象があります。

ぱらとさんのご指摘のように「本来のポケットドリブルとは離れてしまう例も増えている」という状況が、これを機会に修正されていけばいいなと私は思っています。


(5) おわりに

ポケットドリブルの導入はキャリーを増やしたというマイナス面ばかりではなく、肩甲骨の外旋動作(≒肩を引く)をクローズアップしたことよる貢献は率直に評価すべきだと私は考えています。

これも各氏が指摘されているように、タメをつくってタイミングをずらしたり、後ろ方向の動き(バックビハインド、ロールターンなど)にスムースにつなげやすい利点は無視してはならないでしょう。

最近のClubhouseで「ドリブルはボールを引き上げる」という議論が賑わったり、インスタライブでBe a ballerさんが武学籠球の坂口慎さんと対談された際に「ターンドリブル」を取り上げられたりしたことは記憶に新しいです。

私はターンドリブルというスキルを軸に、縦にターンさせればポケットドリブル、横にターンさせればスタブという形で議論が収束すればいいなと勝手な希望を抱きながら、議論の行く末を見守っているところです。


以上