春分の日のイベントを終えて (Part 2):クリニックレビュー

当日のコンテンツと指導方針について

Part 2 はクリニック等の内容とそこでの子供達へのアドバイスに関するレポートです。


(1) 当日は3つのコートに分かれ、3人の講師がそれぞれのコートでクリニックをしたりトレーニングマッチ形式でレッスンしたりでしたので、私が受け持ったパートのみのご報告となります。

今回のイベントの目的としては「選手が自立・自律したプレーを表現する」ことを最も大切にしました。

したがって、クリニックでは「する」(させる)のではなく「なる」(自然にできるようになる)ドリルを工夫し、選手へのアドバイスもプレーの指示や評価ではなく「考え方・在り方」に触れるように心がけました。

なおこれに関連して、イベント前に配布した「保護者のみなさんへのお願い」と「特別ルールについて」の文章を抜粋したものをレポートの最後に付します。


(2) 下級生1 (男女1-4年生)のクリニック

①ボディ(B)ハンドリング&ボール(B)ハンドリング (B&B;自由自在に身体とボールを操作する)
②シュートハンドリング (ワンハンドショットに「なる」ためのキャッチ・構え・スロー)
③ドリブルハンドリング (ボールスピードの速さとコントロール、リズムと緩急)
④サークルドリブルショット (ノーマル〜ドリブルからのパス交換〜2ボールドリブル&パス)

下級生クリニックはコーディネーション・トレーニングをメインテーマとして、B&Bハンドリングは身体コーディネーション、他はボールコーディネーションを主軸としたメニューにしました。

頭がこんがらかる・ボールが取っ散らかる・手足がバラバラになるといった混乱やもどかしさ、カオス的状況を積極的に経験させ、それを解決する神経回路の形成を促したいです。

子供達には「上手くいかなくても気にしない、上手くいかなくてヤキモキするから成長する、上手くいくようになったらやらなくていいドリルなんだよ」と声がけしています。無理ゲーを楽しんでクリアするメンタリティです!


(3) 下級生2 (男女4・5年生)のクリニック

①アウトレットパス3種からツーメン
②逆三角形のスリーメン (フラッシュ&バックドア)

下級生のゲームには、何も考えずにドリブルを突く、ランが一方通行 (戻って来れない)という大きな特徴があります。結果的に運動能力任せのプレーが多くなり、上級生には到底通用しない状況に陥ります。

ここでは、リバウンド直後の状況判断、パスの種類/ドリブルの選択、ガードやつなぎに入るプレーヤーの意識、2人ないし3人のプレーヤーの意図・目的の共有などをテーマに据えました。

なぜそのプレーなのか・理由と目的は? ディフェンスはどういう答えをくれているのか? もし状況が変わったら(どう変わる可能性があるのか、その場合どうすべきなのか)?を一緒に考えながらのパターン練習です。


(4) 上級生クリニック

①ロッカーモーション(3拍子のフェイク1、軸足側にボール)
②シミージャブ(3拍子のフェイク2)
③スペインムーブ〜オープン突き出しのフェイクから切り返し
④スキップ(低く大きく跳ぶ、重心移動でスタンスを広く)〜トータップ(ストレート or チェンジ)
⑤ロールからのフィニッシュ数種(オープンロールも紹介)
⑥ポケットドリブルのコンセプトとダブルドリブルの基準と危険性について
⑦ターンドリブル〜縦・横のハングドリブル (強く低くだけが能ではない!)
⑧フロート&ポケット (ボールを追い越す;ハング動作を利用してのポケット)
⑨ターンドリブルからのスタブ〜スタブからのヘジテーション

上級生クリニックは「個の力を高める」というテーマで、フェイスドライブ&ドリブルドライブをメインにしました。①〜⑤は男子5・6年生、⑥〜⑨は男女6年生&中学生が対象の時間に採用したドリルです。

3拍子のフェイクとポケットドリブルは、HPのブログやFacebookでも詳述してきました。特に今は、日本中を席巻したポケットドリブルに見直しの機運が高まっている点には注意が必要です。

ボブキャッツではターンドリブルとハングドリブルを軸に、ポケット、ヘジテーション、スタブ、インサイドアウトといったスキルを整理した上で指導しており、今回はそのモデルケースとなるように意図しました。


(5) トレーニングマッチにて

トレーニングマッチと言っても、4対4や5対5の形式を借りての状況判断のレッスンであり、プレーを止めてアドバイスをしたり、条件付きでプレーしてもらったりがデフォルトです。

選手たちの自立・自律の観点から、指導陣としては可能な限りプレーに干渉することは避けたいですが、特に下級生に対しては必要と思われたアドバイスは(休憩を兼ねて!)積極的に行いました。

具体的には、仲間だけでプレーしない、その帰結として前を観る習慣・広く観る習慣をつける、味方のドライブの際の合わせと"fill behind"(行き詰まりに備えて後ろに入りレスキューの準備をしておく)の3つを強調しました。


上級生に対しては、公平なチーム分けや交代 (これは下級生も同じですし、ちゃんと出来ていました)、相手の特徴を考慮した攻守の狙い目と工夫、アンガーマネジメント(相手のファウルや味方のミスに対して)などをサラリと(?)アドバイスしました。

考えるための基準や約束事に軽く触れるだけで、あとは選手たちを信頼して任せても大丈夫。ここ数年、子供たちの自立・自律を目標にコーチングをするようになって確信したことでもあります。


参考資料 (配布メッセージから):

子供が自立する姿を大人はただただ応援したい
 
プレーヤーファースト、ボトムアップ・コーチングといった言葉を待つまでもなく、スポーツを通じて子供たちが「自立した人」になり「自律できる人」になることを、ボブキャッツでは最も大切にしています。
 
スポーツ選手としての成長の観点からも、子供たちの自立・自律がなければ勝利は遠のきますし、自立・自律なき勝利に価値はありません。選手の自立・自律は、高いレベルでプレーするために必須の条件であり、スポーツをする最大の目的の一つなんです。

 子供たちが自分で状況を判断しプレーを選択する。大人は「どんなプレーが出てくるのかな?」とドキドキワクワクしながらひたすら前向きに応援しましょう!
 
大人はコートサイドから子供(たち)にダメ出ししたり、ああしろこうしろ指示をるのを我慢してみてください。子供たちが自分で考えて出したプレーに驚かされたり、ミスに終わったとしてもプレーの意図や発想に感心させられたり。新しい観戦の楽しみが見つかるはずです。
 
ミスはどんどんして上達のための材料にしていくべきものだし、敗北は新たな目標ができることを意味するだけです。勝敗や成否は横に置いて、子供たちが楽しそうにバスケ大好きという表情でプレーしてくれれば十分ではないでしょうか?
 
今回はこのことを子供も大人も実感し共感できる場になればいいなと思います。


特別ルールについて
 
コロナ対策としての実効性に鑑み、特別ルールの導入を検討しております。ボブキャッツでは「4ファウルルール」と呼んでいるものです。これは「自分がファウル4回だと思ってプレーする」というもので、状況をよく観て冷静にプレーすることが求められます。
 
このルールのもとでは特にディフェンスは当たりが甘くなりがちですが、大人はそれだけを取り上げて「ディフェンスが緩い」「強気で行け」などと言わないようにしてください。

よく見れば、予測やボールへの寄りが大きく改善し、思い切りも逆に良くなっていることに気づくはずです。このこともまた、「大人はコートサイドから子供たちにダメ出ししたり、ああしろこうしろ指示をするのを我慢」していただきたい理由になっています。


以上