ボディ・ハンドリングと構え

格好よくて効果的なスタンスとは

ラストとなる第4回体験会の終わりに、FIBAルールブック2020年(案)に掲載されたイラストを子供たちに紹介しました。

https://www.dropbox.com/s/yjhxvmujhoae9k7/2020pict.jpeg?dl=0

これはプレーヤーのシリンダーに関するイラストなのですが、2018年版のルールブックではこんな感じでした:

https://www.dropbox.com/s/ekg0tr7hx9d2tvj/2018pict.jpeg?dl=0


シリンダーに関わる競技ルールはともかくとして、私の関心はこれらのスタンスや姿勢=構えにあります。

2018年版の構えは格好悪いですよね…足首を深く曲げすぎて膝が爪先よりもかなり前に出ていること、猫背で骨盤が後傾していることが問題だと思います。(これらの点はイラストのそもそもの目的ではない部分なので、イラストの質や是非を問いたいわけではありません)

2020年版の構えはどうでしょう?ディフェンスはスタンスが広く(一番左のイラスト)、手も自然に広げられていてボールをトレースしようとしていて、胸郭も広がっています。2018年年版との最大の違いは、足首は軽く曲げる一方で膝と股関節をしっかり曲げて広くて低いパワースタンスをつくっている点です(左から2番目と右から2番目のイラスト)。


2020年版のオフェンスの構えに目を転じると、真ん中のイラストはいわゆるトリプルスレットスタンスっぽいですね。私はまずボールの保持の仕方に目がいきます。肘と肩をしっかり引いて胸郭を広げ、ディフェンスからボールを遠ざける格好になっています。右手はボールの真上に置いて、左手はボールの左下から支えており、シュートに転じる際に最速で動くことができます。

一番右のイラストでは、オフェンスがハーフ・アーム位に近接したディフェンスに対抗していますが、これは体験会の終盤にレッスンした基本スタンスですよね!ボールをピボットフット側(この場合は左足)に置いてディフェンスからプロテクトしつつ、フリーフット(この場合は右足)はディフェンスのスタンスの間に踏み込んで、半身姿勢でコンタクト・ポイントをつくっています。


私はまさに2020年版のイラストのようなオフェンス並びにディフェンスの構えがベストだと考えています。具体的なポイントは以下の通りです:

オフェンス : ボールをピボットフット側の腰のあたりに保持するのが基本です。この構えは青山学院大学全盛期の長谷川HCがすでに言及されていましたが、当時はかなり革新的でした。アウトサイドフットをピボットフットとする形(いわゆる外足キャッチ)でボールキャッチする場合、フリーフットをディフェンス側に踏み込むことで自動的にそのような構えになるので、私は特に外側のパス回しの際にはこのやり方を優先させています。

なお、このアウトサイドフットをピボットフットとしてキャッチする際に、外足で止まり切れずにフリーフットが後ろに着地すると、ディフェンスにあおられて苦しくなります。この点も含め、アウトサイドフットでボールキャッチすることを嫌う指導者は少なくありません。アウトサイドフットを「床に斜めに刺せていない」(梅原淳先生の表現!)というボディハンドリングの拙さが原因であり、それを改善すれば良いだけの話だと考えます。

一方、インサイドフットからワンツーステップでボールキャッチした場合は、キャッチ直後にフェイク等を絡めながらボールをピボットフット側に移動しておきます。これは東京医療保険大の恩塚HCが強調しておられるムーブです。そういう意識でネット動画等を観ると、ここまで書いてきた動きが顕著に現れていることに気づくはずです。


ディフェンス: バスケットボールはオフェンスが非常に有利な競技です。ディフェンスはとにかく速く楽に動ける姿勢をとることを最優先したい。近年ではステイローではなくステイハイが良いという言い方すらされています。私は楽で速い自分なりの高さを見つけて欲しいと考えていますが、基本的にハムストリング主導で、スッキリしたふくらはぎを維持できるスタンスが理想です。

足首は曲げる意識を持たず、ふくらはぎと太もも前面の筋肉に力を入れず、すねの骨の上に乗ってバランスを取ります (中村考宏先生の仰る骨格スタンス)。両足の間にオフェンスを捉えるためにスタンスを広くしたいので (大阪Jokersの中嶋コーチのスタンスバリア理論)、股関節を深く畳み込みつつ開脚&爪先開きの構えを取ります。

足首を曲げず、かつ股関節を深く曲げることで、膝は自然に大きく曲げられることになります。この時、上半身の重さや動きはハムストリングと骨盤がサポートすることに注目してください。特に太ももの前面の筋肉への依存度は低く、プルプルに緩めておくことすら可能なはずです。骨格スタンス+ハムストリング主導=楽で速い姿勢(=足が太くならない)ということです。


今後のレッスンでも常に強調していくことになると思いますので、理屈はともかく選手の皆さんもぜひ2020年版のイラストのような構えをイメージしてみてください!

以上