フェイスドライブの総まとめ

1対1を進化させる (2) 

ドリブルドライブに続き、今回はフェイスドライブ。パスをもらって軸足を意識しながら、ステップワークやフェイクでディフェンスを崩し、突き出しからの1・2回のドリブルで抜き切るというイメージでしょうか。

ネットでスクール動画等を観ると、ドリブルドライブのシーンが圧倒的に多いですよね。NBAやB.LEAGUE等の試合を観ても、特にガードはボールキャッチからそのまますぐにボールを床に突き落としてドリブルドライブに入っていくことがほとんどです。

なぜフェイスドライブよりもドリブルドライブが優先されているのでしょうか?逆にドリブルドライブを優先することによるマイナス面は何でしょう?これらを考えることで、それぞれの利点や使い分け方がみえてきます。


(0) まずフェイスドライブを仕掛ける際の注意点です。ここだけは選手の皆さんにも是非読んでほしいです!

①ボールのもらい方や床への降り方からこだわっていきましょう。初心者が一番陥りやすいミスは、Vカットのつもりが I(アイ)カットになってしまうことです。同じ場所を行ったり来たりでは、内側にいるディフェンスに簡単に対応されてしまいます(ディフェンスの内線の利と言います)。

Vカットは文字通りVの形を意識して、ディフェンスがパスカットに来るコースを遮りながらレシーブに動きます。また、レベルが上がるとディフェンスはVカットを守るのに慣れているので、Lカットやシールといったコンタクトしつつボールをもらうスキルを優先したいです。Cカットやカールカットやフラッシュ、スクリーンの利用もジュニア期から経験すべきだと考えます。

キャッチファースト=ボールを確実にキャッチするのが最優先ですが、キャッチ後の着地の過程ではディフェンスだけでなくパサーの動きやリング方向の状況も観る習慣をつけましょう。フリーフットをどこに着地させるか、体をどちらに向けて勢いをどう使うかも重要です。

②ピボットフット側にボールを置くことで、フリーフットによるジャブステップを踏みやすくなります。フリーフットとボールが一体化しないのでディフェンスは守りにくく、ボール・プロテクションも容易です。

アウトサイドフットからのキャッチは、自動的にピボットフット側にボールを置くことになる点で有利です。フリーフットをリング方向に踏み込まないとディフェンスに圧迫されるので気をつけましょう。特にバランスを崩してフリーフットを後ろに踏んだら苦しくなりますよ…

インサイドフットからのワンツーキャッチは、止まりやすいのとオープンステップによる速い攻めが可能であることが利点になります。ボールは最初フリーフット側にありますが、そのまま抜けない時はピボット&ボール移動でピボットフット側にボールを置き直します。

③ボールを持った際の攻め気が何よりも大切です。「ボールを持ったら自分で行け!」という意味ではなく「ドライブやショットに積極的に行くという攻め気を見せることで、パスやフェイクといった他のプレーが容易になる」ということです。前回も書いた最重要ポイントですね!

攻め気によってディフェンスを思うように動かし、パスコースを空けさせ、ドライブコースを創り出します。攻め気があるからディフェンスはフェイクに引っかかります。フェイクには2拍子系と3拍子系がありますが、後者は人間の脳の仕組みを逆用したもので効果が高いです。


(1) フェイスドライブが有利な点

①リングからの距離にもよりますが、シュート・ドリブル・パスの3つの選択肢がある状態で駆け引きをするため、ディフェンスとしては守りにくい面があります。

逆にシュートが打てない距離でボールを持っている場合は、ドリブルかパスしか選択肢がないので、さっさとドリブルを開始してドリブルドライブで抜く方がやり易いでしょう。

②また、ボールキャッチした直後は体の勢いが残っているので、そのまま進む/急ストップして切り返す/進むとか切り返すとかをフェイクに使うといった動きに鋭さが出ます。ディフェンスの方はスピードを合わせつつポジションを調整せねばならないので難しい局面です。


(2) フェイスドライブが不利な点

①軸足に縛られるのが一番の特徴です。身体やボールの移動範囲に限界があるし、突き出しの際のトラベリングにも気をつけねばなりません。ディフェンスもオフェンスの軸足を基準にして守ってくるので、お互いに「お約束」の動きの出し合いになることが多いです。

仕掛けるパターンが限られてくるとはいうものの、そこは日進月歩で新しい技が産まれてきます。様々なジャブステップ、ロッカーやシミーモーション、クロスハンド突き出しとその発展形であるスペインムーブ。

どれも簡単かつ効果的ですが、案外スキルとして追求されていない印象が強いです。ボブキャッツではもちろん抜かりなく身につけていきます!

②また、チームとしてはボールの動きが止まることになるので、それをどう考え位置付けるのか?例えば速攻やボール運びの際にどんどんプッシュしたい時は、フェイスドライブを考えずすぐにドリブルをつくことになるでしょう。

ハーフコートオフェンスでは、フェイスドライブを仕掛けてボールが止まっている間に、オフボールマンの4人が何をするかが重要になってきます。ボールマンが仕掛けるのを見物している、いわゆるボールウォッチは避けたいですが、ワサワサ動き回るのも考えものです。

オフェンスはスペーシングがすべてと言われます。私もスペーシング重視ですが、最近は単に物理的なスペースを広く使うよりも、「心理的な距離」の概念や、狭いスペーシングの利点も合わせて考えるようになってきました。その辺は別の機会に。


(3) これは指導者向けの議論ですが、スキル体系の中で両者を考える際、基本的な考え方として「フェイスドライブ時にやれることの多くはドリブルドライブ時にもやれる」ということがあります。

①例えば、フェイスドライブ時のジャブステップに対する、ドリブルドライブ時のドリブルジャブ。フェイスドライブ時のピボットに対する、ドリブルドライブ時のドリブルピボット。フェイスドライブ時のショットフェイクに対する、ドリブルドライブ時のシャドー。

②また、フェイスドライブ時に出来ないのは軸足を動かしての移動(→トラベリング)であり、ドリブルドライブ時に出来ないのはボールの保持と空中での持ち替え(→ダブルドリブル)です。

言い換えれば、フェイスドライブ時はボールの保持や持ち替えが武器になり、ドリブルドライブ時は軸足の制限がないことを活用すべきです。後者は例えばツーステップ、スキップ、フットスイッチ、スピン、ヒップスウィベルなどで、ボブキャッツの練習でも強調されているスキルですね。


以上