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エアボーンタイムその後 - 盾と矛でオフェンスを底上げする段階に

先日「エアボーンタイム+ハーフラインルール」の導入でランニングゲームが良いリズムで展開できるようになったとご報告しました。特にオフェンスへの切り替えがとても早く・速くなり、味方のパスキャッチの瞬間に周りが動くタイミングが非常に良くなりました。

しかし昨日のレッスンでOGの高校生2人と6年生がスクリメージに加わったところ、スクール生のエアボーンアタックは不発に終わるケースが多かったです。

おかげでエアボーンタイムの理解が更に進みましたので、今回はそれについてレポートします。


(1) オフェンスが停滞した原因は、エアボーンタイム中に次の動きの準備が十分に出来ていないことにありました。

「エアボーンタイムの時間帯にはディフェンスが動き、その時間帯が終わる瞬間に今度はオフェンスが動く」というイメージで指導してきましたが、ディフェンスが早くも対応してきたと言えます。

やはり「盾と矛」の法則は健在で、オフェンスが上手く機能し続けると今度はディフェンスが頑張って鍵となるムーブを邪魔しようとし始めました。と言うことは、次はオフェンスがそれを打ち破る方策を見つける番になるはずです。


(2) これまでは、エアボーンタイムはディフェンスがポジション調整のために全力で動く時間なので、わざわざそれとやり合わずに様子を見て、ディフェンスがポジション調整を完了した瞬間にオフェンスが仕掛けるのがクレバーだという想定に立っていました。

しかし昨日のディフェンスは「ポジション調整の完了=一旦動きが止まる/安心して隙ができる」のではなく「ポジション調整の完了=オフェンスの次の動きに対応する準備も完了している」という一段上のレベルにありました。

ジャンプトゥザボールが徹底され1・2・3線のポジション取りも適切なディフェンスに対し、オフェンスが後手で仕掛けるのは当然不利になります。特にパスラインを牽制されつつボールサイドカットをバンプされるとオフェンスリズムを作るのは困難です。


(3) ではオフェンスが更にその上を行くにはどうすれば良いのか?

昨日の私のアドバイスは「エアボーンタイム中にオフェンスも動こう」「ディフェンスに寄って反応を見ながら逆をつこう」というものでした。今思うと前者は漠然とし過ぎていたし、後者はディフェンスの意図を読み取るのが難しかったようです。

ここはもっとシンプルに「エアボーンタイム中はフェイクを入れよう」とだけ言って、ディフェンスのポジション調整を妨害するように仕向けるのがベターだったかなと反省しています。

機械的にフェイクを入れる段階の子もいれば、ディフェンスとのコンタクトや背中を取る動きを工夫する段階の子もいるでしょう。いずれにしても、その場にステイしてディフェンスを楽にするようなことを避けることから始めようと考えています。


(4) 上に書いたことはディフェンスとの1対1の局面にフォーカスしていますが、私はこれをオフェンスの個人戦術として捉えて「ディフェンスが答えをくれる」「ディフェンスを動かす⇨反応を観る⇨後出しジャンケン」といった原理原則を伝える機会にしています。

ダイレクトなパスラインを牽制されたら裏や違う角度からのコースが生じる、バンプされたら接触を利用して裏を取ったりシールしたり、接触を外してシャローカットできる。ディフェンスに寄ってその場に張り付けてコンタクトしやすくしたり、逆に離れることでディフェンスを引き連れていくこともできる。

表でパスをもらえず裏でももらえなければ、逆サイドに流れたり他のオフボールマンとポジション交換したりといった機転を利かせられるようにもなってほしい。その際には新たににどんなチャンスが生じるのか?「こうすればこうなる」というプレーロジックを楽しく学びたいものです。

エアボーンタイムはディフェンスが集中を高める時間帯ゆえに、スクリーンやフェイクに引っかかりやすい、動きが行き過ぎてしまうといったケースも容易に想像できます。そういう特性も理解しながら「速く・正確で・賢いバスケットボール」を目指したいです。


(5) もっと先には、エアボーンタイムを使ってスペーシングを整えたり、オフボールスクリーンをセットしたりも出来るようにもなるでしょう。

エアボーンアタックではオフボールマン4人が同時にボールにミートしようとする傾向が強まるので、アウトサイドとインサイドのバランスや「次のレシーバーになるのか、次の次のレシーバーになるのか」といった役割分担も意識できるようになってほしいです。

上で触れた「逆サイドに流れたり他のオフボールマンとポジション交換したり」といった動きは、そのままでもスクリーン的な効果をもちますが、お互いの視点と意図が合うようになれば(目が会い息が合う)がっつりスクリーンを活用できるようになるでしょう。


指導者仲間である大阪のJokersの中嶋さんからは「エアボーンタイムに何個か仕掛けを作り、(ディフェンスが)詰んだ状態を作るには? 」を考えているとのレスポンスを頂いていましたが、次の課題はまさにそれなんだろうなと思っっています。

最終的にはフォーメーションないしシャッフルやフレックス等の連続的なシステムに発展していくんだろうなとも考えていますが、ジュニア期には他にやるべきことがたくさんあるので、当面は私自身の研究課題にしておこうと思います。


以上

【ハーフラインルールとエアボーンアタック】 1月第3週・第4週のレッスンレポート + 初心者の指導

2021年1月21日〜2021年1月31日、レッスン#52〜#56

1月第3週と第4週(第52回〜第56回)のレッスンレポートです。文中に出てくるハーフラインルールとエアボーンアタックに関しては、先日ブログに詳しくまとめました。


(1) 今月後半はハーフラインルールとエアボーンタイムを導入した時期でもあります。(リンクは https://bobcats-yokohama.com/blog/124150.htmlhttps://bobcats-yokohama.com/blog/121860.html )

個人スキルの向上が中心のレッスンではありますが、スクリメージの中で効果的に使えることを大切にしているので、スクリメージ自体の質や強度も引き上げる必要があります。

そのために今回は小学校低学年から中学生までの全てのメンバーに、個人戦術としてハーフラインルールとエアボーンタイムを説明して実行してもらいました。競技レベルや経験値によってやれることは変わりますが、個人としても全体としてもバスケIQが大きく向上したと感じています。


(2) ハーフラインルールの効果

攻守の切り替えのタイミングが早くなるだけでなく切り替え時のスピードも速くなったことで、集中を欠かさず100%のダッシュをしないと勝てない状況が頻繁に生じるようになりました。運動強度が相当上がるのでスクリメージは2分刻みにしています。

全体的にパスがどんどん前に飛ぶようになった印象も強いですが、ディフェンスも簡単にやられないように頑張れるようになってきました。ドライブに転じるタイミングは逆に難しくなるので、積極性を失わないように注意したいです。

やはり「ボールマンが一番強い」ということです。コンタクト&パスレシーブ、フェイスドライブ&ドリブル、コンタクト&フィニッシュなどを引き続き磨きながら、ディフェンスも直線的に抜かれない賢い1対1を学んでいきます。


(3) エアボーンタイムの効果

オフェンスのエアボーンアタックの効果としては、ボールマンが前を観る意識が高まると同時に、オフボールマンがパスを受けに行くタイミングとコース取りが非常に良くなりました。パスチャンスを逃さなくなったことで、展開スピードやリズムも軽快になりました。

特にボール運びにおけるフラッシュによるつなぎ、ハーフコートオフェンスにおけるフラッシュ&バックドア/シザース/ハイポストドライブといった連携プレーが連続でできたりして、ゲームの質が一気に高まりました。

エアボーンディフェンスに関しては、フラットトライアングルやジャンプトゥザボールを通じたポジショニングを学び始めたばかりというところです。声によるコミュニケーションもまだまだやれることがたくさんありそうです。


(4) 12月位から初心者・初級者の入会が続いており、低学年のメンバーと合わせて基礎・基本に割く時間が増えてきました。しかし、中学生や上級生のメンバーは開校以来のレッスン目標である「ハイレベルな個人スキル」「質の高いゲーム」を追求し続けねばなりません。

色々な競技レベルに応じられる柔軟なメニュー、スクリメージにおけるメンバー分けやゲームテーマの設定に加え、来年度に向けてはレッスン日や会場あるいは時間帯を分けるといった工夫が必要になるかも知れません。

いずれにせよ常にプレーヤーファースト、子供たちが笑顔でプレーできることを最優先しながら、横浜ボブキャッツスクール&クラブチームを進化させていきたいと考えています。


以上

ハーフラインルール - 早く速いトランジションを目指して

ハーフラインルールはボブキャッツと自チームで導入している、トランジションオフェンスならびにトランジションディフェンスの指導アプローチです。


(1) 具体的なルールと実戦上の要請は次のようなものです:

A. ディフェンス時にマイボールになったら(失点時を含む)、ハーフラインまでダッシュしつつ攻める
B. オフェンス時に相手ボールになったら(得点時を含む)、ハーフラインまでダッシュしつつ守る
C. ハーフライン以降もダッシュを続けるかどうかは、個々のプレーヤーの状況判断にまかせる
D. 役割分担を意識できるプレーヤーはハーフラインに向かわずに他のムーブをおこなっても良い


◯ A・Bは当然と言えば当然なプレーですが、低学年や初心者が出遅れてチームプレーにほころびを生じさせることが多い局面であり、ルール化する意味は小さくありません。スクリメージ中にボールポゼッションが代わる度に「ハーフライン」と声がけすることで、迷わず切り替えることが出来るようにもなります。

なお、このような習慣が必要かつ有効となるのは、タッチダウンパス(リードパス)によるワンマン速攻ができることが前提となります。タッチダウンパスが失敗したとしても相手エンドからのスローインで再開しますから、逆速攻されるリスクが無いお得なプレーです(若水中・元HC杉浦裕司先生)。


◯ Cは機械的なトランジションバスケに陥らないためにも必須のルールです。例えば、速攻に走ってもパスが間に合いそうにないならば走り続ける意味はなく、フラッシュに転じたりトレールに動いたりと目的を変更する必要があります。

あるいは、相手の速攻時にハリーバックしてディフェンスに戻ってもリバウンドやパスカットに間に合わないのであれば、失点後のスローインや仲間のリバウンドによる反転速攻の準備をする方が理に適っています。


◯ Dも実戦上は当然のことで、例えばオフェンスに転じた際にオフボールマンが4人とも前に走っては、攻めを組み立てられません。ただし高い位置でスローインのパスやリバウンド後のアウトレットパスを受けるのは有利なので、ガードでも一旦はハーフラインダッシュを試みるというのは効果的な選択です。

逆に、ディフェンスに転じた際に5人全員がハーフラインまでハリーバックするのは悪くない習慣です。しかし、オールコートディフェンスを展開したいとかボールマンには早目にプレッシャーをかけたいといった場合には、ハリーバックせずに残る意識を持たねばなりません。


(2) このアプローチの利点は以下の通りです:

- レベルに応じたトランジション意識を持てるようになるので、経験値が積み上がるのを待たずにチーム全体の攻守の切り替えが早く・速くなる。
- 自動化(戦術のタスク化)された動きから始めて、個々の状況判断によって変更OKとすることで、ルールが進化していくと同時にバスケIQを養成できる。

- 根性バスケ的な強制された走りや無駄な走りをなくすことで、体力を浪費したり気力を損なったりを防ぐことができる。

低学年や初心者でも速攻に参加したり、ディフェンスに遅れず戻ることで、最初からチームに貢献できます。経験者であれば「どこまで走るか・走らず戻るか・コースを変えるか」といった判断を主体的におこなうことで、ゲームを自分のものとして捉えられるようになります(オーナーシップ)。


(3) 機動的なトランジションバスケットボールを目指して

攻防のスピードで相手と対等かそれ以上でないと常に後手にまわることになりますし、普通に1対1で守れないと破れを繕うことに終始するディフェンスに陥ってしまいます。遅いチームや守りの緩いチームはそもそも論外ということです。

逆に、速いチームは遅くもプレーできるし、脚を使ってプレッシャーをかけて守れるチームはノーマルディフェンスも普通にできますから、そういう方向でチーム創りをするのが合理的だと考えています。

上述したように、走るバスケやトランジション主導のバスケは導入の仕方を間違えると、ひたすら走りまくる根性バスケやプレッシャーディフェンスからの速攻オンリーのガチャガチャした落ち着きのないバスケットボールに逆戻りしてしまいます。

例えばハーフラインまでのダッシュを常に義務付けたりしては本末転倒なことになります。ハーフラインルールが硬直的にならないようなプレーヤーファーストの配慮が必要な部分だと言えます。


(4)最近のレッスン内容との関連性について

①ハーフラインルールはエアボーンタイム(前回のブログ)と同じく、基本的にトランジション&スピード志向のコンセプトです。オフェンスは前への展開力、ディフェンスはハリーバックによる安定した守りが目的になります。

この種のプレースピードは、走るスピード&コース、ボールスピード、タイミング、予測力&判断力といった複数の要素が合わさって決定されるもので、走る部分だけを鍛えても実現できません (この点については別のブログで触れる予定です)。

ハーフラインまではダッシュしよう、味方がボールをキャッチした瞬間にすぐ動こうと思うことで、これら全ての要素を磨かれると考えています。当然ながらパスやドリブル自体のスピードアップや無駄な動作の排除も必要です。


②ゲームを通じて終始100%近いダッシュで往復し続けることは、女子は大学レベルでタイムシェアを採用してすら困難です。成長期後半の中学女子であっても、終始ダッシュで往復するなら70%〜80%がせいぜいです。したがって小中学生の場合は発達過程に合ったやり方を模索していく必要があります。

小学生は持久力が向上する手前の時期なのですぐにエネルギー切れになるし、女子は特に先々を見越して力をセーブする特性があります。それゆえ「常にではなく場面を限定して」ダッシュを求めるのが実際的です。

終始80%程度のスピードでコートを往復する「走るチーム」に対して、「必要かつ可能な局面で100%のダッシュ」をして優位をつくることが鍵になります。「必要かつ可能な局面」を見極める判断力も磨く必要があります。これらはまさにハーフラインルールが直接寄与できる部分だと考えています。


③効率よくダッシュの要否を判断しよう、無理無駄ならダッシュをやめていいよと言われても、レベルが上がるとエンドからエンドまでダッシュする以外の選択肢は少なくなってきます。運動量の増加は避けて通れません。

ハーフラインダッシュで終わらず3Pライン位まで走り続ける場面がしばしばあり、運動量が相当増していることに子供たちも気づくはずです。ハーフラインルールは選手が自分の判断で自発的に(納得して?)走ろうという意思を持てるようになることを期待するものです。


④結論: オフェンス面ではハーフラインルールとエアボーンアタックとを組み合わせることで、プレースピードを最大限にもっていきたいです。トランジション時に一旦リングに向かって攻めることで、ワンパス速攻、戻ってのつなぎ、トレールやアラウンド、ピストルなどへの展開も容易になります。

ディフェンス面では、ハーフラインルールを徹底することで相手の速攻からの失点を最小限にしたいです。更にエアボーンディフェンスを強調することで、パスが空中にある間にポジション移動を終わらせ、イージーショットの機会をつぶすことを期待しています。


以上