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エアボーンタイムとは Part 4:エアボーンのコンセプトの導入効果

目次 (1) エアボーンタイムとディフェンス
   (2) エアボーンタイムにおける10人の動き
   (3) エアボーンタイムはディフェンスが有利?
   (4) エアボーンタイムとオフェンス
   (5) 声がけとしての「エアボーン」の効用


(5) 声がけとしての「エアボーン」の効用

ゲーム中の声がけとしては「エアボーンタイム」では長すぎるので、私の場合ディフェンス時には「エアボーン」、オフェンス時には「(ボールを)持った瞬間」と言い換えています。

小学生であってもエアボーン中のディフェンスシフトやエアボーン終了時のオフェンスムーブをイメージするのは簡単です。中学生であれば特にエアボーン中のディフェンスの動きが緩むケースが多くなってきますので、そこに意識を集中させるのが最も効果的です。

経験上ジュニア選手であっても「エアボーン」などと声がけするだけで、攻守ともに先読みして動く意識や動くタイミングの感覚が強まる印象があります。以下、ディフェンスとオフェンスに分けてエアボーンタイムのコンセプト導入の効果についてまとめます。


①ディフェンス時は「エアボーン」

ボールマンディフェンスでは、ボールマンがオフボールマンに変わった際の違いをはっきり意識できるようになります。その結果、パス後のジャンプトゥザボールやカッティングに対するバンプ、シュート時のボックスアウトが自動化されるようになります。

オフボールディフェンスでは、ボールマンがシ・ド・パを実行する前からマイマンの動きを気にしてチラチラ見たり、ポジションを微調整する動きが顕著に増えます。ボールマンをガン見していては、エアボーンタイム中にどう動くべきかの答えは得られないからです。

ただし、ボールマンが抜かれた際に、オフボールマンがマイマンを完全に捨ててカバーに出ることを躊躇させる側面もあります。逆にマイマンを気にしながら他のオフェンスのドリブルやダイブの動きを牽制する「スタント」等は自然に出やすいので、上手く誘導したいところです。


②オフェンス時は「持った瞬間」

オフボールマンはやみくもに動き回ることなく、レシーバーがボールを「持った瞬間」を目標に仕掛けることができるようになります。その結果、パス&ラン、フラッシュ、バックカット等のタイミングを測ることが上手になってくるのが如実に感じられます。

レシーバー(新たなボールマン)にとっては、ボールを「持った瞬間」に前を見れば、必ず味方がフリーになろうと動いてくれているので、気持ちの余裕とフォーカスができます。ボールマンが攻め気を見せることでディフェンスはインラインに張り付けられ、有効なパスラインが創れる点も重要です。

タイミング良いミート&パスと「ハーフラインルール」を合わせることで、超速の「エアボーンアタック」が実現します。ただし、全体的にパスをつなぐ意識が増幅されがちになるので、パスだけが目的にならないようドライブやショットによる攻め気を弱めないように注意すべきです。


以上

エアボーンタイムとは Part 3:オフェンスにとっての意味と活かし方

目次 (1) エアボーンタイムとディフェンス
   (2) エアボーンタイムにおける10人の動き
   (3) エアボーンタイムはディフェンスが有利?
   (4) エアボーンタイムとオフェンス
   (5) 声がけとしての「エアボーン」の効用


(4) エアボーンタイムにオフェンスはどうすべきか?

オフェンスはボールをチームコントロールしている分、ボールの所在や動きに縛られざるを得ません。それゆえにボールの動きが確定しているエアボーンタイムにやれることは限られています。

エアボーンタイムはまた、ディフェンスが全速力でポジション調整に動く時間であり、オフェンスの動きは捕捉されやすく、ディフェンスに対して優位を得るのは難しいです。

このような状況において、オフェンスはどう立ち回れば有利になれるのか?


①動き出しのタイミング

エアボーンタイムが終了した瞬間を考えてみます。この時ディフェンスは全速でのポジション調整を終えたばかり、かつ関心が新たなボールマンの動きに向いています。

オフボールとなる4人のオフェンスにとってこの瞬間こそ最大のチャンスになり得る、というのが基本的な考え方になります。実は藤浪中時代の鷲野先生の練習でパッシングダウン・ドリルを観察していて気づいたことです。

鷲野先生が具体的に指示することはありませんでしたが、選手たちは一貫して、味方がパスをキャッチした瞬間に動きを変化させることで次のパスを受けるチャンスを創ろうとしている印象でした。

原田茂先生の「なぜそこへ動く、なぜそこへパスをする、なぜそこでボールを持つ、そのタイミングで」という有名な問いかけ、これに対する一つの回答であると考えています。


②エアボーンタイム = オフェンスの状況判断の時間

エアボーンタイムのオフェンスは、レシーバーはパスコースに応じてキャッチしようとして動くことに集中し("Catch First")、それ以外の4人は次のレシーバーになれるように動くのが基本となります (パッシング&モーションオフェンス)。

エアボーンタイム中のディフェンスの動きを把握し、エアボーンタイムが終了するタイミングでSLCVムーブやフェイク&カッティングを利用して次のパスを受けようとするわけです。初心者は4人ともリングに向かってしまいがちですが、これは誰もが通る道、「通過儀礼」なので経験させておくべきと考えます。


さて、新たなボールマン以外の4人の動き方に約束や法則がないとカオスになるのは明らかで、それゆえスペーシングの考え方が重要になります。ボールマンへの絡み方、ドライブへの合わせ、お互いの距離、スクリーン等の最低限の約束事が必要です。

お互いの動きを邪魔しない、あるいはお互いの動きを利用する意識が持てるようになると、ジュニア世代であってもインサイドアウト、ダイブ&リフト、フラッシュ&バックドア、サークル、シャローカット&ポップアウトと言った連携プレーも表現できるようになります。

ちなみにパックラインディフェンスに対しても、パスが回りやすいことにだまされず、カッティングでギャップ(スペース)を作ってそこを攻めることが鍵になるとされています。


③パスの種類とエアボーンタイム

パスキャッチのたびにオフェンスにチャンスが生じるのであれば、スピードのあるショートパスを頻繁に飛ばすのがベストであるということになります。その意味で、タップパス、クイックなストレートパスなどは練習する価値が高いと考えられます。

また、ストレートパスを実現するためにはパスラインを空けさせる必要があり、レシーバーがディフェンスの陰に隠れない位置どりをすること、パサーが攻め気を見せてディフェンスをインラインに張り付けることが重要になります。

なお、シールやバックカットした味方への裏パスはループパスやバウンズパスが主ですし、フラッシュの裏に飛び込む味方へのスルーパスはループパス系となり長いエアボーンタイムが生じるので、ディフェンスにそれを活用させない工夫が必要になります。


④ドライブ、キャッチ&ショット

パスが連続せずに、レシーバーがドライブに転じたり、キャッチ&ショットを選択した場合には、エアボーンタイムをどう考えれば良いのでしょうか?

ドリブル中に関しては、ドリブルを終えてボールを保持する瞬間までではなく、1回1回のドリブルでボールが手元に戻るたびにエアボーンタイムが終わるとみなします。オフボールマンの合わせの動きとの整合性も取りやすく実戦的です。

キャッチ&ショットがなされた場合は簡単で、ニュートラルボールの局面としてオフェンスはリバウンド確保(ないしセイフティ)に動くのみとなります。ディフェンスにとっては、パスに対する場合とは異なり、全員がマイマンに近接してボックスアウトに動きます。

より正確なタイミングとしては、シュートが放たれてからではなく、シュートが放たれようとした時点でディフェンスはボックスアウトに動き始め、オフェンスはリバウンドポジションを確保しようとするのが基本です。


Part 4では、ゲーム時における「エアボーン」の声がけの効用についてまとめます。

(続く)

エアボーンタイムとは Part 2:ディフェンスを有利に展開するには

目次 (1) エアボーンタイムとディフェンス
   (2) エアボーンタイムにおける10人の動き
   (3) エアボーンタイムはディフェンスが有利?
   (4) エアボーンタイムとオフェンス
   (5) 声がけとしての「エアボーン」の効用


(3) エアボーンタイムはディフェンスが有利 !?

上に書いたように、実はディフェンスにとってエアボーンタイムは「ボールを見なくて良い時間」であり「人」を守ることに集中できる楽な(?)時間です。しかもエアボーンタイムに「人=オフェンス」がやれることは限定的で、ディフェンスの対応も一択か二択です。

ボールは空中で急に方向や速度を変えたりはしないし、パサーはオフボールマンになることが確定していますから、ディフェンスは「9+1+B+G」ではなく「8+1+G」に意識を集中すれば足りるとも言い換えられます。

では、ディフェンスはこの「楽な時間」を活かしてどのように守ればいいのか?


①ポジション移動: エアボーン中に全速力で動き、終了時には止まっていること

【ボールマンDEF】パスのレシーバーのディフェンスは、まずはダッシュしてレシーバーになるべく近づくことです。上手いパスはレシーバーぎりぎりの位置でなければカットできないし、レシーバーにパスが渡ってしまった際にも間合いを詰めやすくなるからです。

また、レシーバーに近づくことで、キャッチ時もキャッチ後もプレッシャーをかけることができるし、十分に近づくことができればオフェンスはショットできませんから(両手打ちの場合は特に)、ショットフェイクにかかることも無くなります。


【オフボールマンDEF】レシーバー以外の4人に対するディフェンスは、裏パスをカットできるかの判断が必要なケースもありますが、多くの場合はマイマンを追いながらレシーバーの次のアクション(ドライブかパスかシュートか)に対応できる位置に動くだけです(詳細は②で)。

ここでマイマンを追う際に気をつけねばならないのは、カッティングのコースは表(フロント/ボールサイド/インフロント・カット)と裏(バック/ブラインド・カット)があることと、追うコースにスクリーンがセットされている場合があることです。

基本的にはジャンプトゥザボール(JTTB)やフラットトライアングルによって表のカッティングを阻止した上で、裏へのカッティングの動きをチェイスして、次のパスが入らないようにすることでパス回しがスムースにいかないようにします。


②適正ポジションの確保: 要求される間合いを取り、フラットトライアングルを形成すること

【ボールマンDEF】レシーバーに対しては適切な間合いかそれ以上に近い間合いをとるようにします。クローズアウトをゼロにすることは難しいですが、ボールマンにとって最大のチャンスとなるロングクローズアウトを生じさせないことが重要です。

キャッチ時にすでに近づいて止まっているならば、レシーバーに対するクローズアウトの必要もなくなり、スタンスを広く取りつつ止まり(スタンスバリア=大阪Jokersの中嶋さんのコンセプトです)、その後のドライブに対応することに集中できます。

実は間合いが狭過ぎてもOKで、オフェンスの最初のステップに普通に反応すれば(ファーストリアクション)、そのステップがフェイクだった場合には適切な間合いに戻るし、突き出してきた場合にも余裕を持って動けます (京都紫野高校の元HC吉田さんのDVDに触発されたアイディアです)。


【オフボールマンDEF】オフボールマンのディフェンス位置に関しては、特にジュニア期では「フラットトライアングル」のコンセプトだけで間に合う印象を私はもっています。ゲーム中に「三角形は?」と声がけするだけで、マイマンをガン見したりボールに気を取られたりが無くなりますよ!

フラットトライアングルはまた、ディフェンスがボールマンとマイマンの両方の動きを見ることを可能にし、マイマンのボールサイドカットをバンプしやすくなり(①の後半でも触れたポイント)、スクリーンコール等のコミュニケーションをスムースにしてくれます。

フラットトライアングルは結局、ディフェンスの最大の強みである「内線の利」を活かすことができるポジショニングということになります。エアボーンタイムが終わった際にシュートされるキャッチ&ショットのケースで、ボックスアウトを実行しやすいポジショニングでもあります。

なお、東京医療保健大学の恩塚享HCは、フラットトライアングルの目的として、オフェンスにダイレクトパスをさせないことを強調されています。ディフェンスの頭越しのパスかバウンズパスに限定することでエアボーンタイムが長くなり、ディフェンスが対応しやすくなるわけです。


Part 3では、エアボーンタイムとそれ以後におけるオフェンスの対抗策についてまとめます。

(続く)