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(続)ポケットドリブルを見直す - ターンドリブルとスタブを軸に

簡単かつ実戦的なやり方はこれ!

半月前にポケットドリブルの課題や解決法についてまとめました( https://bobcats-yokohama.com/blog/132642.html )が、その後たくさんの方とのやり取りがあり自分の中でも整理できましたので、続編を書いてみたいと思います。


(1) 結局のところポケットドリブルとは何なのか?

①ポケットドリブルの定義としては「ドリブル中にボールの背面に手を持ってくる動作である」とすれば十分だと私は考えています。

表面的な動作としては親指を上に向けるだけですが、内部感覚(知覚?)的には「ボールの勢いに手がわざと負けることで手首がフロアに垂直になるまで返る」(結果として親指が上を向く)ということになります。

この動作による効果として、タメ(時間&反動)をつくることでリズムを変えたり(ドリブルの緩急)、パスやシュートに転じたり、フェイクを織り交ぜたり、ステップを組み合わせたりが可能になります。


②ポケットドリブルの練習動画でよく見る「その場で」「強く突く」「後ろに引く」といったパターンは、本質的な要素ではないように思えます。

ボール保持状態から「スタブしつつ突き出す」とかドリブルピボットでバックターンする以外にはその場ドリブルでポケットすることはないでしょうし、強く突くこと自体ではなく「ボールの圧を手のひらに感じる」ことが重要です。

また、次項でも触れますが、「後ろに引く」だけでなく「横に引く(スタブ)」「真下に突く(ドロップステップ)」といった重要なステップ&ボール操作もポケットドリブルのバリエーションに含まれます。

これらの点に関しては、山本柊輔さんの最近の動画が非常に参考になります。:「キープ力爆上がり‼︎ 試合で使えるポケットドリブル」( https://youtu.be/x3YN07Z6yug )


(2) ポケットに入れるやり方は3つ

①前回まとめた通り、肘・肩・肩甲骨を引く、ターンドリブルで丸く突き戻す、ボールを真下に突いて踏み込むなど、色々なやり方でポケットドリブルを実現できます。

あとで詳しく触れますが、ターンドリブル・スタブ・踏み込みとポケットドリブルはお互いに深く関係し合っているように思えます。


②ターンドリブルに関するスキル動画はまだ少ないですが、例えばBe a baller/ハレルヤさんがスタブ動作に絡んで横方向のターンドリブルに触れておられます:「スタブレッグ/0→100の緩急で相手を倒す必殺技」( https://youtu.be/VhxhONgqXr8 ;3部作になっていていずれも非常に勉強になります)

ターンドリブルによるポケットドリブルでは、手首の返しが(ボールが弾み上がる過程の)最後に来るので、手首・手のひらの操作でボールを押さえる(手中に張り付かせる)のが容易で、キャリー(ダブルドリブル)になりにくいです。

その代わりにタメにくくなるので、スタブ&踏み込みを組み合わせてボールの軌道を長くして時間を作るのが良いと私は考えています。


(3) スキル的には重要な要素がてんこ盛り!

①親指を上に向けるだけとは言うものの、関連するファンダメンタルズに目を向けてみると、大切な気づきがたくさんありました。例えば:

- ドリブルランの基本として、親指以外の4本はボールを突くとき前を向き(親指は横向き)、受けるときには横を向く(親指は前向きも上向きもありえる)。

- ボールの勢いに手がわざと負けるのは「ハングドリブル」と呼ばれ、フロート/グライドと組み合わせると強力な実戦スキルが出来上がる。

- ボールの勢いに手が「わざと」負けるのであって、ボールを押さえ続けて重さ(勢い、慣性)を手のひらで感じ続ける必要がある。(ボールが上に逃げてしまうと下から支えるしかなくなり、キャリーしてしまう)

- ポケットドリブルは「トリプルスレットでのドリブル」であり、パスを出せるタメが作れれば、そこからドライブやシュートにも繋げられる。これは神奈川のクラブチームYMTCの山本亮介さん(facebookだとRyohsuke Yamamotoさん)からのアドバイスです!


②ボールを真下に突いて踏み込む方法に関しては、北海道Unskillfulの能澤誠さん(no51mkt / @UNSKILLFUL51)から「(足裏の)横アーチ、小趾球横にバウンドさせると戻ってきやすい」とのアドバイスを頂戴しました!

通常は例えば右手ドリブルであれば、ボールを突く際に左足が出て、ポケット&踏み込みの際に右足を出すことになるので、そのまま容易にヘジテーション/アイバーソンクロスオーバーに移行することができます。

この時にパンチストップ的にドリブルをもう一回早く突くと、ボールを突くのもポケット&踏み込みも右足となり、ボールが戻るのに合わせて左足を出すといわゆる「裏拍子」になります。

裏拍子/裏拍については、3x3の齊藤洋介さんがYouTubeチャンネル「Back beat Attack」で精力的に情報発信されており、私も目下研究中です。


(4) おわりに

このように、ポケットドリブル自体は簡単に実現できるスキルであり、女子選手やジュニア選手にも積極的に身につけて欲しいと思っています。

また、重要なファンダメンタルズや他の発展スキルとの関係も深いことから、子供達にポケットドリブルを習得してもらいながら、さらにレベルの高いムーブ/スキルにつなげていきたいですね。


以上

春分の日のイベントを終えて (Part 2):クリニックレビュー

当日のコンテンツと指導方針について

Part 2 はクリニック等の内容とそこでの子供達へのアドバイスに関するレポートです。


(1) 当日は3つのコートに分かれ、3人の講師がそれぞれのコートでクリニックをしたりトレーニングマッチ形式でレッスンしたりでしたので、私が受け持ったパートのみのご報告となります。

今回のイベントの目的としては「選手が自立・自律したプレーを表現する」ことを最も大切にしました。

したがって、クリニックでは「する」(させる)のではなく「なる」(自然にできるようになる)ドリルを工夫し、選手へのアドバイスもプレーの指示や評価ではなく「考え方・在り方」に触れるように心がけました。

なおこれに関連して、イベント前に配布した「保護者のみなさんへのお願い」と「特別ルールについて」の文章を抜粋したものをレポートの最後に付します。


(2) 下級生1 (男女1-4年生)のクリニック

①ボディ(B)ハンドリング&ボール(B)ハンドリング (B&B;自由自在に身体とボールを操作する)
②シュートハンドリング (ワンハンドショットに「なる」ためのキャッチ・構え・スロー)
③ドリブルハンドリング (ボールスピードの速さとコントロール、リズムと緩急)
④サークルドリブルショット (ノーマル〜ドリブルからのパス交換〜2ボールドリブル&パス)

下級生クリニックはコーディネーション・トレーニングをメインテーマとして、B&Bハンドリングは身体コーディネーション、他はボールコーディネーションを主軸としたメニューにしました。

頭がこんがらかる・ボールが取っ散らかる・手足がバラバラになるといった混乱やもどかしさ、カオス的状況を積極的に経験させ、それを解決する神経回路の形成を促したいです。

子供達には「上手くいかなくても気にしない、上手くいかなくてヤキモキするから成長する、上手くいくようになったらやらなくていいドリルなんだよ」と声がけしています。無理ゲーを楽しんでクリアするメンタリティです!


(3) 下級生2 (男女4・5年生)のクリニック

①アウトレットパス3種からツーメン
②逆三角形のスリーメン (フラッシュ&バックドア)

下級生のゲームには、何も考えずにドリブルを突く、ランが一方通行 (戻って来れない)という大きな特徴があります。結果的に運動能力任せのプレーが多くなり、上級生には到底通用しない状況に陥ります。

ここでは、リバウンド直後の状況判断、パスの種類/ドリブルの選択、ガードやつなぎに入るプレーヤーの意識、2人ないし3人のプレーヤーの意図・目的の共有などをテーマに据えました。

なぜそのプレーなのか・理由と目的は? ディフェンスはどういう答えをくれているのか? もし状況が変わったら(どう変わる可能性があるのか、その場合どうすべきなのか)?を一緒に考えながらのパターン練習です。


(4) 上級生クリニック

①ロッカーモーション(3拍子のフェイク1、軸足側にボール)
②シミージャブ(3拍子のフェイク2)
③スペインムーブ〜オープン突き出しのフェイクから切り返し
④スキップ(低く大きく跳ぶ、重心移動でスタンスを広く)〜トータップ(ストレート or チェンジ)
⑤ロールからのフィニッシュ数種(オープンロールも紹介)
⑥ポケットドリブルのコンセプトとダブルドリブルの基準と危険性について
⑦ターンドリブル〜縦・横のハングドリブル (強く低くだけが能ではない!)
⑧フロート&ポケット (ボールを追い越す;ハング動作を利用してのポケット)
⑨ターンドリブルからのスタブ〜スタブからのヘジテーション

上級生クリニックは「個の力を高める」というテーマで、フェイスドライブ&ドリブルドライブをメインにしました。①〜⑤は男子5・6年生、⑥〜⑨は男女6年生&中学生が対象の時間に採用したドリルです。

3拍子のフェイクとポケットドリブルは、HPのブログやFacebookでも詳述してきました。特に今は、日本中を席巻したポケットドリブルに見直しの機運が高まっている点には注意が必要です。

ボブキャッツではターンドリブルとハングドリブルを軸に、ポケット、ヘジテーション、スタブ、インサイドアウトといったスキルを整理した上で指導しており、今回はそのモデルケースとなるように意図しました。


(5) トレーニングマッチにて

トレーニングマッチと言っても、4対4や5対5の形式を借りての状況判断のレッスンであり、プレーを止めてアドバイスをしたり、条件付きでプレーしてもらったりがデフォルトです。

選手たちの自立・自律の観点から、指導陣としては可能な限りプレーに干渉することは避けたいですが、特に下級生に対しては必要と思われたアドバイスは(休憩を兼ねて!)積極的に行いました。

具体的には、仲間だけでプレーしない、その帰結として前を観る習慣・広く観る習慣をつける、味方のドライブの際の合わせと"fill behind"(行き詰まりに備えて後ろに入りレスキューの準備をしておく)の3つを強調しました。


上級生に対しては、公平なチーム分けや交代 (これは下級生も同じですし、ちゃんと出来ていました)、相手の特徴を考慮した攻守の狙い目と工夫、アンガーマネジメント(相手のファウルや味方のミスに対して)などをサラリと(?)アドバイスしました。

考えるための基準や約束事に軽く触れるだけで、あとは選手たちを信頼して任せても大丈夫。ここ数年、子供たちの自立・自律を目標にコーチングをするようになって確信したことでもあります。


参考資料 (配布メッセージから):

子供が自立する姿を大人はただただ応援したい
 
プレーヤーファースト、ボトムアップ・コーチングといった言葉を待つまでもなく、スポーツを通じて子供たちが「自立した人」になり「自律できる人」になることを、ボブキャッツでは最も大切にしています。
 
スポーツ選手としての成長の観点からも、子供たちの自立・自律がなければ勝利は遠のきますし、自立・自律なき勝利に価値はありません。選手の自立・自律は、高いレベルでプレーするために必須の条件であり、スポーツをする最大の目的の一つなんです。

 子供たちが自分で状況を判断しプレーを選択する。大人は「どんなプレーが出てくるのかな?」とドキドキワクワクしながらひたすら前向きに応援しましょう!
 
大人はコートサイドから子供(たち)にダメ出ししたり、ああしろこうしろ指示をるのを我慢してみてください。子供たちが自分で考えて出したプレーに驚かされたり、ミスに終わったとしてもプレーの意図や発想に感心させられたり。新しい観戦の楽しみが見つかるはずです。
 
ミスはどんどんして上達のための材料にしていくべきものだし、敗北は新たな目標ができることを意味するだけです。勝敗や成否は横に置いて、子供たちが楽しそうにバスケ大好きという表情でプレーしてくれれば十分ではないでしょうか?
 
今回はこのことを子供も大人も実感し共感できる場になればいいなと思います。


特別ルールについて
 
コロナ対策としての実効性に鑑み、特別ルールの導入を検討しております。ボブキャッツでは「4ファウルルール」と呼んでいるものです。これは「自分がファウル4回だと思ってプレーする」というもので、状況をよく観て冷静にプレーすることが求められます。
 
このルールのもとでは特にディフェンスは当たりが甘くなりがちですが、大人はそれだけを取り上げて「ディフェンスが緩い」「強気で行け」などと言わないようにしてください。

よく見れば、予測やボールへの寄りが大きく改善し、思い切りも逆に良くなっていることに気づくはずです。このこともまた、「大人はコートサイドから子供たちにダメ出ししたり、ああしろこうしろ指示をするのを我慢」していただきたい理由になっています。


以上

春分の日のイベントを終えて (Part 1):ご挨拶とお礼

参加してくださった選手たち、保護者、スクール関係者の皆さんへのお礼

Part 1 は選手たち・保護者の方々・スクール関係者の方々へのご挨拶・お礼となります:


ご参加くださったみなさんへ


先週土曜日のワンデーイベント&交流会、選手、保護者、スクール関係者のみなさんは終日お疲れ様でした。

そして今週は小学校の卒業式、桜の花が満開に向かう中の嬉しい門出になりました。改めましてご卒業おめでとうございます。

卒業に合わせるかのように緊急事態宣言も解除となり、これからは中学校の部活およびミニバスの活動も正常化していくものと期待しています。


今回は「6年生のさよならイベント」であると同時に、6年生たちを迎える中学校の先輩たちがリーダーシップを発揮する場、6年生たちを送り出す後輩たちの学びの場にしたいと考えました。

学年や年齢といったカテゴリーを越えて交流する機会は少なく、そこに大きな価値があります。

更に、バスケットボールという競技スポーツを通じ子供たちが自立・自律していく姿を、大人はただただ前向きに応援していく。そのことの意義も再確認できたと確信しております。


いつまでも飽くことなくプレーを続ける姿に、夢中は努力に勝るという意味を知り、高いスキル、アドバイスを聴く姿勢、コートでの表現力には、子供たちの不断の努力を想わされました。

大人からの叱責やダメ出しといった行為も全くなく、子供も大人もひたむきにバスケットボールに浸りきった。そんな一日になったことを幸せに思います。

子供たちのスポーツマンシップと保護者の方々のご協力のおかげで、笑顔があふれるイベントを実現できましたことに心より感謝申し上げます。


今後もクリニック、交流会、体験会などを随時開催したいと考えておりますので、ご案内させていただきます。

また新年度の常設プログラムでは、レッスン枠の増加、クラス分けの導入、活動エリアの拡大、クラブチームの創設(希望者が集まった場合)などを計画しており、決まり次第ご報告いたします。

昨年夏の開校時の夢と志を忘れず、地域の子供たちに幸せなスポーツ体験を提供していきます。今度ともどうぞよろしくお願い申し上げます。


横浜ボブキャッツバスケットボールクラブ
磯田和彦 堀野正人